今回はおすすめの書籍をご紹介します。本のタイトルは『イノベーション・オブ・ライフ』。
著書は、ハーバードビジネススクールの名物講師でもあり、イノベーションのジレンマやジョブ理論といった名著を執筆しているクレイトン・クリステンセンさんです。破壊的イノベーションの理論を確立した経営学者としても有名なクリステンセンですが、この本では、幸せな人生を送るために、経営理論を仕事だけでなく幅広い生活の場面に活用する方法を説いています。本書は「幸せなキャリアを歩む」「幸せな関係を築く」「罪人にならない」の3部構成になっています。今日は最初の幸せなキャリアを歩むについてピックアップしてお伝えします。
幸せな仕事
いきなり質問ですが「あなたにとって幸せな仕事とは何ですか?」と問われたらなんと答えるでしょうか?
- 給料がたくさんもらえる仕事
- やりがいを感じられる仕事
- 家族の時間を大切にできる仕事 等
人によって色々な価値観があると思いますし、正解はありません。
特に意識していない人も多いかもしれませんが、自分の人生において、何を重視したいのかを明確にしておかないと取り返しのつかないことになるとクリステンセンは言います。実際に、ハーバードビジネススクールを卒業した優秀な仲間たちが、「まずは教育ローンを返すために給与の高い仕事に就いて、2-3年したら本当にやりたいことをする」と言って、5年10年と給与の高い仕事を続け、次第に家庭が崩壊し、仕事へのやりがいもなくなっていく様を数多く見たそうです。給与が上がった分、生活水準を上げてしまい、他の仕事をするという選択肢がなくなってしまったわけです。
衛生要因と動機付け要因
では、こうならないようにするにはどうすれば良いでしょうか?
本書では、まず、仕事を選ぶ際に、衛生要因と動機付け要因の二つに分解して考えるとあります。衛生要因とは給料や職の安定、仕事に不満がない状態を指します。動機付け要因はやりがい、責任感、自己成長などを指します。衛生要因がマイナスを0に近づける動きに対して、動機付け要因は0からプラスに持っていく動きです。
ここで、面白いのは給料が動機付け要因ではなく、衛生要因に入っているところです。つまり、どれだけ給料が良かったとしても、その仕事を愛することはできないという訳です。
先日、友人から転職の相談を受けた時に、衛生要因と動機付け要因に分解して、今の仕事の不満と満足しているポイントを言語化していくと、衛生要因に大きな課題があることが分かりました。衛生要因を改善することが構造的に難しいことが分かり、自分の価値観にあった転職先を前向きに考えるようになりました。もし、今の仕事に不満・不安がある場合や、転職を考えているという方は、この二つの要因で整理することをお勧めします。
ホンダがアメリカで成功した理由
さらに、意図的戦略と創発的戦略を組合わせてキャリアを考えるメリットを、ホンダがアメリカでスーパーカブを爆発的にヒットさせた例を使って説明しています。1960年代にホンダは、アメリカでハーレーダビットソンなど、強力なオートバイの競合に対して真っ向から挑みました。結果、この戦略は大失敗に終わるのですが、スーパーカブで走るホンダの社員を町で見かけた人から、徐々に「あのバイクはどこで買えるんだ?」と噂になります。経営陣は最初に立てた戦略の負けを認めたくなかったものの、資金も厳しくなり、ついにスーパーカブを売る戦略に切り替えたところ、知っての通り、ホンダはアメリカで大成功をおさめます。
キャリア選択でも、まずは意図的戦略で考えつつ、創発的戦略もバランスよく組み合わせる必要があります。当初新卒で入った会社が思っていたものと違ったり、別の分野に興味が湧くことはよくあります。当初の戦略は変わる前提でキャリアプランを組んだ方が無難です。そして、意図的戦略を立てる時に、「なんの仮説が正しいと証明されたらその戦略が正しいと言えるか?」を徹底的に考えた方が良いです。例えば、転職活動前に仕事のやりがいを大事にしたい価値観があると分かった際に、まず、やりがいを感じられるとはどんな状態かを整理します。毎日一回は顧客からありがとうと言われることがやりがいと感じる場合、その環境が整っているか、社員にヒアリングすることが必要です。
まとめ
今日はイノベーション・オブ・ライフという書籍を紹介しました。この他にも、ジョブ理論を日常生活にあてはめるパターンや、組織文化の形成を家庭内文化形成にあてはめる方法など、目からうろこの内容がもりだくさんです。是非手に取ってみていただけると嬉しいです。