冒険の書 AI時代のアンラーニング

ゴールデンウィーク前ということで、長期休暇におすすめの本を紹介します。

ご紹介する本は「冒険の書 AI時代のアンラーニング」です。

著者は孫泰造さんです。

孫泰造さんはソフトバンクの孫正義さんの弟で人気スマホゲームパズドラを作った人でもあります。日本にシリコンバレーを作ることを目標にしている起業家、投資家で様々な教育関連のスタートアップ支援もしています。

冒険の舞台

タイトルの冒険の書と聞いて、ドラゴンクエストを思い浮かべた人もいるかもしれません。私もその1人です笑
まさにはじめてドラクエをプレイした時のワクワクがずっと止まらない内容になっていますが、本書の冒険の舞台は「教育」です。

「人は何のために学ぶのか?」という問いを軸に、過去の偉人たちの残した膨大な書籍や言葉を手がかりに、その起源を知り、今すべきことを著者と一緒に考える構成になっています。

本書は大きく以下の3つの問いから成り立ちます。

  • なぜ今の学校という形は出来上がったのか?
  • 詰め込み学習から抜け出すためには?
  • AI時代にすべきことは?

一つ目のなぜ今の学校という形に出来上がったのか?について考える上で学校はどんな要素で成り立っているか分解して考えます。

例えば、1クラス30人から40人くらいで一斉に授業を受けますが、このクラスという概念はなぜできたのか?同い年をあつめて同じ学年としていますが、この学年制はなぜできたのか?など、普段当たり前に受け入れすぎて疑問にも思わなかったことを著者の鋭い問いかけによって明らかにしていきます。

学校がつまらない理由

実は学校の起源は今から200年前も昔に遡ります。

1800年前後にイギリスで今で言うスタートアップの若手起業家が学校を立ち上げ、それまでは一対一で教えるのが当たり前だった時代にに1対多で教えることで効率的に知識を伝えることができるクラスという形態を発明します。ちょうどその頃、イギリス政府によって学校に対して出席日数や学力に応じて補助金を出す制度が作られ、粒をそろえる方が効率的に教育できるかつ補助金ももらいやすいという理由で学年制が出来上がりました。

こう考えると、未だに200年前の教育システムを継続し続けているだけでなく、このシステムができた目的も決して質の良い教育をするためではないことが分かります。

詰め込み型学習から抜け出すためのサイクルとは?

では、今の学年制で詰め込み型の学習から抜け出すためには何をすべきなのか?
筆者は、問い→行動→新しい問い→行動のサイクルを回すことを推奨しています。

例えば印刷機の発明後の話が面白いです。

  1. 印刷機が発明されたことによって多くの人が本を読む文化が広がる
  2. すると実は人間は視力が悪いことに気が付き、眼鏡が発明される
  3. そうなると、目には見えないミクロな世界の存在に気が付く
  4. それによって顕微鏡が世の中に生まれ、さらに様々な研究領域がそこから生まれる

なんとなくビジネスパーソンは目の前の課題解決に目を向けがちですが、それだけではなく、自分の中から湧き上がる純粋なる問いを持って、それに対して何かアクションすることが大切な時代になりました。

自分の軸を持てとか、自分なりのキャリアを歩むべしなど自分らしいキャリアをこしらえないといけない風潮もありますが、問いに対して純粋に行動し、行動することで新たな問いを生むというサイクルができれば、自然と自分らしく前向きで明るい未来が待っていると感じました。

ロケット鉛筆のように価値観を更新し続ける

最後の三つ目のAI時代にすべきことは?に対しては、これまでの価値観を捨て新しい意味を見出すことが大切と筆者は言います。

本書のサブタイトルも”AI時代のアンラーニング”ですが、新しいことを学ぶことによってこれまでの価値観を捨てて、別の視点を自分が持つことで、世界を新しい景色としてとらえ続けることが大切と言っています。

千葉雅也さんの「勉強の哲学」という本にも、学ぶとはノリが悪くなること記載があります。

あなたは過去に何かを学んだ後、これまでの自分だと気にも留めなかったことが、なぜか急にひっかかって気になり始めた経験はないでしょうか?

AI時代は、昔の価値観にとどまり続けるのではなく、更新し続けることが必要です。その過程で、あなたは意味がないと思っていることでも見方を変えると意味を見出すことができるようになります。これは他の動物にもAIにもできない人間ならではのアクションです。

出口治明さんの書籍「座右の書『貞観政要』」にも、学ぶとは知識を積み重ねるというよりも、自分の棚の中からこれまであるものを捨てて新しいものを入れる感覚という趣旨の内容がありました。


価値観を更新=イメージとしてはロケット鉛筆に近いのかもしれません。

学ぶことで新たな価値観に更新し続けるというのが筆者の主張なわけですが、個人的にはこの主張自体も将来的には更新される価値観かもしれないと思って学ぶ姿勢が大切だと感じました。

人生は長くなったのに、時代は加速しているのであれば一つの価値観を貫き通すことは難しいです。朝令暮改でコロコロ価値観が変わるのも信用を失いますが、人生単位ではむしろ歓迎しても良いのかもしれません。

まとめ

というわけで、「冒険の書 AI時代のアンラーニング」という本をご紹介しました。
本書はいろんな知識を得られるという面白さもあるのですが、筆者の問いかけがとにかく鋭くて深いというのが見どころだと個人的には思います。是非、手に取ってみていただけると嬉しいです。

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