今日は、1on1ミーティングについて考えます。ここ数年、テクノロジーの進化によりAIに仕事を奪われるみたいなホラーニュースをよく聞きますが、その中でも人間が勝てる領域としてコミュニケーション能力があります。リーダーシップの書籍でも、部下との対話を通してチームをまとめることの重要性がいたるところで出てきます。書籍によっては1週間で30分の1on1をして信頼関係を築ける人数があなたが直接マネジメントできる人数の限界という表記もあります。(参考図書『仕事に関する9つの嘘』)
しかし、対話と一言に言っても実は非常に難易度の高い営みです。例えば、部下もしくは上司と1on1ミーティングをする機会があっても、信頼関係がないとうまく話してくれなかったり、そもそも相手が自分の悩みを把握してないことも多々あるからです。人間の行動のうち90%は無意識と言われるように、実は自分のことを理解していない方がほとんどです。
私も仕事で、メンバーと1on1で話す機会も多く、日々試行錯誤している身ではありますが、グロービスで学ぶビジネスパーソンとこれまでに200名以上の方との対話を通して、少しずつ対話の方法を改善して来ました。まだ未熟者ではありますが、今日は1on1ミーティングで相手の悩みや本音を引き出す、そんな良い対話をするために押さえておきたいポイントについて三つお伝えします。
前提として対話を成功させるための絶対条件として、相手が自分の言葉で悩みをアウトプットすることが必要です。
つまりひたすらに相手の話を正確に聞くスキルが何より重要になります。聞く割合が9割ぐらいがベストとも言われていますが、ひたすら相手の話を聞くのって案外難しいです。
そこで私が今からお伝えする三つのポイントを押さえるまで自分の話をしないことを意識してみてください。
コーチングのスキルでもあるんですが頭文字をとってPBPの三つを意識して相手と対話をすると良いです。
能力の壁
一つ目のPは「Posession」つまり能力です。
相手が何かしらの能力に関する壁にぶち当たっている、もしくは何かの能力が身に付けば前進する場合がこれにあたります。つい先日、私が相談役を務めている会社で、仕事が忙しくてパンク状態になっている社員の相談にのって欲しいと言われて1on1をしました。本人は仕事の割り振り量が多いことを問題に抱えていたのですが、仕事の進め方を確認しているとフォルダの管理が苦手で、データを検索している時間がかかっていることが分かりました。その後、フォルダの管理術などをお伝えしたところこれまでよりも残業時間が減らすことにつながりました。
そもそも行動するのは難しい
二つ目のBは「Behavior」つまり行動です。
意外に思われるかもしれませんが、能力があるのに単純に一歩踏み込んだ行動をとることができずに悩んでいる人は多いものです。しかし、多くの場合、自分が単純に行動できていないことに気づいていない人がほとんどです。あまり気に留めずに話を聞いていると、その人なりに行動しているように感じます。惑わされないように、聞き手として話を聞く際に、その人の意見と事実を切り離して考えることが大事です。「本当は別の部署に提案を持っていきたいが、その部署はこの提案を否定しそうなのでしっかり練らないといけない」こんな悩みを聞いたとしても、これは全て意見で他部署から否定された事実はないので、一旦提案してみると意外とすんなりいける場合もあります。
視点を変えると見える景色
三つ目のPは「Presence」つまり、考え方です。
私の勤めるビジネススクールの受講生からのよくある相談で「3か月一生懸命学んだのに周りは進歩しているのに自分は全然進歩していない」という悩みがあります。深く考えずに聞いてしまうと、先ほど一つ目に紹介した能力に課題があると紐づけてしまって能力開発の方法をアドバイスしてしまうのですが、真因は別だったりします。学びをどの場面で使いたいと思っているのに使えないのか?だけでなく、使えている場面にも目を向けることが大事です。ほとんどの受講生は、これまで全く意識できていなかった分解の考え方を会議中に発揮できていたり、ピラミッドストラクチャーで物事を構造的にとらえることができていたりと、成長していることにあらためて気づきます。できていないと考えることから、ここまでできたと認識することで悩みが減ることが本当によくあります。
まとめ
1on1ミーティングで相手と対話をするために、能力、行動、考え方を把握することが重要とお伝えしました。人間は人の話を黙って最後まで聞くというのが苦手な生き物です。もし相手の意見をしっかり聞けていないなと感じる方は、この能力、行動、考え方の全てのヒアリングが終わるまで自分の話をしないようにしてみてください。相手すら気づかなかったインサイトに触れることにつながるかもしれません。参考になると嬉しいです。